本稿では植物研究雑誌10巻5号 (1934年5月25日) 312頁 “日本産たんぽぽ属の研究の研究 (其五)” (小泉秀雄) に準拠する。これは記載論文ではない。本論文は小泉秀雄が和文にて解説したものである。記載論文についてはリンク先記事で紹介している。
ヒロハタンポポ Taraxacum longe–appendiculatum NAKAI
(生態) 好んで海辺に生ずるが、往々にして海岸より少し離れた丘麓や山腹に生える。多くは点生ないし粗生し、密に群落を作らない。本邦で角状突起が最大の種。花期は4-5月。
(産地) 本州中部 (伊豆、駿河、伊勢、志摩、三河?)
(分布) 日本特産種にして東海道太平洋沿岸の伊豆伊勢間に分布し、他に産しない。
全株は同属他種に比して小-中形で、10-15 cm、まれに15-20 cm。花は黄色。根について往々にして長大で、たいてい単頭。頸部には鱗片が粗く着く。葉は全体として斜上し、緑色。表面には白細毛を粗く葺き、脈上ではやや密に葺く。裏面では脈上以外は無毛。倒披針形から箆状披針形で、先端は微凸頭、基部は長楔形。狭く長い葉柄を有するが、翼は無い。微歯牙縁から欠刻縁で、まれに不整羽裂から中裂。長さは5-10 cm、幅は6-20 mm。花茎は1-4本で、開花時花 (註:葉の誤植か) と同長か、それよりも長い。上部にはクモ毛~羊毛をやや密に葺き、その他の部分ではたいてい無毛。頭花は同属他種に比して中形で、黄色。舌状花は黄色で、下面に紫褐色の条が入る。長さ10-14 mm。中部には細毛がやや密に生え、毛は細長く5-10細胞から成る。総苞片はたいてい淡緑色から緑色で倒卵底から円錐底または卵底。瓦状になり、たいてい外列片と内列片の区別はやや明瞭か不明瞭。総苞外列片は2.5-3列で生え、緩く接するか多少散開し、往々にして外列片と中列片はやや反曲する。卵状披針形から披針形で長さは6-10 mm、まれに10-12 mm。多少先端が尾状になり、辺縁は無毛から有毛、先端は屈曲し、鈍頭から鋭頭。背面には大きな角状突起を有し、角状突起は袋状角形から短鎌形で、斜上し、鋭端、長さは2-6 mm。総苞内列片は披針形からノミ状披針形で先端は尾状に伸び、鈍-鋭頭で長さ11-14 mm。たいてい角状突起があり、角状突起は小形から中形、無毛から上部では微毛縁。縁には狭く透明な膜縁がある。1-3行脈が見える。痩果は扁紡錘形で、藁色から淡藁褐色。果頭は棒状で、有節からやや無節。極めて微細な棘を密生。無溝から2溝。果体には4-6溝があり、斜上する棘が密生し、下部は皺のある縮み方をする。極めて微細な棘を全体に葺く。果脚は果体と同数の溝あるいは同数の肋があるか、減数する。両側に小さい棘を1列に生やし、他は棘がなくほとんど平滑。冠毛托は円盤状のものを伴う倒円錐形で、縁に細歯は無い。冠毛は白色から淡褐白色。
【比較】
中井の記載に対して、小泉の和文による解説では中井が言及していない特徴も補完されている。共通項を以下に対照させる。
(中井) 葉は倒披針形または箆状倒披針形で、葉柄は楔型に沿下し、長さ3-7 cm。葉縁は波状縁または歯牙状縁。葉面表面は緑色で、当初まばらに白毛を葺き、次第に無毛になる。主脈は隆起する。葉面裏面の主脈と側脈は隆起し、有毛。先端は丸みを帯びた微凸頭。
(小泉) 葉は全体として斜上し、緑色。表面には白細毛を粗く葺き、脈上ではやや密に葺く。裏面では脈上以外は無毛。倒披針形から箆状披針形で、先端は微凸頭、基部は長楔形。狭く長い葉柄を有するが、翼は無い。微歯牙縁から欠刻縁で、まれに不整羽裂から中裂。長さは5-10 cm、幅は6-20 mm。
(中井) 花茎の先端にはクモ毛が生える。
(小泉) 花茎は1-4本で、開花時花 (註:葉の誤植か) と同長か、それよりも長い。上部にはクモ毛~羊毛をやや密に葺き、その他の部分ではたいてい無毛。
(中井) 総苞片はほぼ2列に並ぶ。
(小泉) 総苞片はたいてい淡緑色から緑色で倒卵底から円錐底または卵底。瓦状になり、たいてい外列片と内列片の区別はやや明瞭か不明瞭。
(中井) 総苞外列片は披針形または卵状披針形で長さ6-8 mm。付属体は扁平な袋状の距のようなもので、外見で半鏃形の袋は長さ3-6 mm。
(小泉) 総苞外列片は2.5-3列で生え、緩く接するか多少散開し、往々にして外列片と中列片はやや反曲する。卵状披針形から披針形で長さは6-10 mm、まれに10-12 mm。多少先端が尾状になり、辺縁は無毛から有毛、先端は屈曲し、鈍頭から鋭頭。背面には大きな角状突起を有し、角状突起は袋状角形から短鎌形で、斜上し、鋭端、長さは2-6 mm。
(中井) 総苞内列片は長さ12-13 mmの披針形ー突錘状で、先端は三角形の付属体がある。
(小泉) 総苞内列片は披針形からノミ状披針形で先端は尾状に伸び、鈍-鋭頭で長さ11-14 mm。たいてい角状突起があり、角状突起は小形から中形、無毛から上部では微毛縁。縁には狭く透明な膜縁がある。1-3行脈が見える。
(中井) 舌状花は黄色で背面に紫条が入り、長さ7-8 mm。筒部の長さは6-7 mm。
(小泉) 舌状花は黄色で、下面に紫褐色の条が入る。長さ10-14 mm。中部には細毛がやや密に生え、毛は細長く5-10細胞から成る。
(中井) 痩果は背腹に扁平な紡錘形で、長さ4 mm。背面に2つの肋があり、腹面には3つの肋が1本の肋に結合し、中間から上部、特に先端はざらつく。嘴部は長さ6-7 mm。
(小泉) 痩果は扁紡錘形で、藁色から淡藁褐色。果頭は棒状で、有節からやや無節。極めて微細な棘を密生。無溝から2溝。果体には4-6溝があり、斜上する棘が密生し、下部は皺のある縮み方をする。極めて微細な棘を全体に葺く。果脚は果体と同数の溝あるいは同数の肋があるか、減数する。両側に小さい棘を1列に生やし、他は棘がなくほとんど平滑。
(中井) 冠毛はたいてい白色で、長さ6 mm。
(小泉) 冠毛は白色から淡褐白色。
1)
●/
▲全株小ー中形、高10-15稀15-20 cm.
■全株は同属他種に比して小-中形で、10-15 cm、まれに15-20 cm。
2)
●/
▲黄花
■花は黄色。
3)
●/
▲根ハ往々長大概単頭、頸部鱗粗着。
■根について往々にして長大で、たいてい単頭。頸部には鱗片が粗く着く。
4)
●/
▲葉ハ斜上生、緑色、表面白細毛粗布脈上稍密布、裏面脈上外無毛、倒披針形ー箆状披針形、微凸頭長楔脚、狭長-無翼有長柄、微歯牙縁-欠刻縁稀不整羽裂ー中裂、長5-10 cm. 幅6-20 mm.
■葉は全体として斜上し、緑色。表面には白細毛を粗く葺き、脈上ではやや密に葺く。裏面では脈上以外は無毛。倒披針形から箆状披針形で、先端は微凸頭、基部は長楔形。狭く長い葉柄を有するが、翼は無い。微歯牙縁から欠刻縁で、まれに不整羽裂から中裂。長さは5-10 cm、幅は6-20 mm。
5)
●/(裂片)
▲/
■/
6)
●/
▲花茎ハ1-4、花時花ト同長内外又超出、上部蜘毛ー羊毛稍密布、他ハ概無毛。
■花茎は1-4本で、開花時花 (註:葉の誤植か) と同長か、それよりも長い。上部にはクモ毛~羊毛をやや密に葺き、その他の部分ではたいてい無毛。
7)
●/
▲頭花ハ中形黄色;舌状花ハ黄色下面紫褐條、長10-14 mm.、中部細毛稍密生、毛ハ細長5-10細胞。
■頭花は同属他種に比して中形で、黄色。舌状花は黄色で、下面に紫褐色の条が入る。長さ10-14 mm。中部には細毛がやや密に生え、毛は細長く5-10細胞から成る。
8)
●/
▲総苞ハ淡緑ー緑色、倒卵底ー円錐底又ハ卵底、覆瓦状、概内外列稍分明-不分明;
■総苞片はたいてい淡緑色から緑色で倒卵底から円錐底または卵底。瓦状になり、たいてい外列片と内列片の区別はやや明瞭か不明瞭。
9)
●/
▲総苞外列ハ2.5-3列生緩接多少散開、往々外中片半反捲、卵状披針形ー披針形、長6-10稀10-12 mm.、多少有尾、縁辺無毛ー有毛、先端屈曲鈍-鋭頭、背面具大角、角ハ嚢状角形ー短鎌形斜上、鋭端、長2-6 mm.;
■総苞外列片は2.5-3列で生え、緩く接するか多少散開し、往々にして外列片と中列片はやや反曲する。卵状披針形から披針形で長さは6-10 mm、まれに10-12 mm。多少先端が尾状になり、辺縁は無毛から有毛、先端は屈曲し、鈍頭から鋭頭。背面には大きな角状突起を有し、角状突起は袋状角形から短鎌形で、斜上し、鋭端、長さは2-6 mm。
10)
●/
▲同内片ハ披針形ー鑿状披針形有尾、鈍-鋭頭、長11-14 mm.、概有角、角ハ小ー中形、無毛ー上部微毛縁、狭透明膜縁、1-3行脈;
■総苞内列片は披針形からノミ状披針形で先端は尾状に伸び、鈍-鋭頭で長さ11-14 mm。たいてい角状突起があり、角状突起は小形から中形、無毛から上部では微毛縁。縁には狭く透明な膜縁がある。1-3行脈が見える。
11)
●/(花冠毛)
▲/
■/
12)
●/
▲痩果ハ扁紡錘形藁色-淡藁褐色;
■痩果は扁紡錘形で、藁色から淡藁褐色
13)
●/
▲果頭ハ棒状有節-稍無節、極微刺密生、無溝ー2溝;
■果頭は棒状で、有節からやや無節。極めて微細な棘を密生。無溝から2溝。
14)
●/
▲果体ハ4-6溝、斜上棘密生下部漸瘤起、極微刺満布;
■果体には4-6溝があり、斜上する棘が密生し、下部は皺のある縮み方をする。極めて微細な棘を全体に葺く。
15)
●/
▲果脚は同溝同肋或減数、両側小刺1列生他ハ無刺殆平滑;
■果脚は果体と同数の溝あるいは同数の肋があるか、減数する。両側に小さい棘を1列に生やし、他は棘がなくほとんど平滑。
16)
●/
▲冠毛托ハ有盤倒円錐形無歯縁;
■冠毛托は円盤状のものを伴う倒円錐形で、縁に細歯は無い。
17)
●/
▲冠毛ハ∞類白色ー淡褐白色。
■冠毛は白色から淡褐白色。[註 : ∞類については不明]
新釈 ヒロハタンポポ (小泉秀雄解釈)
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