本稿では植物研究雑誌9巻6号 (1933年10月25日) 364頁 “日本産タンポポ属の新種(其一)” (小泉秀雄) に準拠する。これは記載論文である。
コウヤタンポポ Taraxacum numajirii H. KOIDZUMI
タイプ:紀伊国高野 (1933年5月6日 沼尻好 採集)
全株は同属他種に比してやや小型で約20 cm以下。葉は全体として亜直生ー直生、花は黄色。T. hondoense に似ている。しかし全株は小さい。葉は直生し、鋭頭。花茎は約3本で、開花後でも葉より短い。総苞片はたいてい小さい角状突起を有する。総苞外列片は広卵形、縁には明瞭な半透明の縁どりと長縁毛がある。先端は決して内側に曲がらない。果実は淡い藁色で、明瞭なやや深い2溝がある。
【考察】
タイプ標本が所在不明となっている本種は、北村 (1957) のモノグラフではT. pectinatum KITAMURA (クシバタンポポ) の異名として扱われている。同じ高野山から見出されているT. nemotoi H. KOIDZUMI (ケタンポポ) も同様の扱いとなっている。タイプ標本の採取者沼尻好は高野山中学教諭を勤めた人物であるが、当該標本には小泉秀雄の通し番号は明示されていない。小泉が記載する場合、そのタイプ標本の採取者が本人以外の者であっても、小泉のメモ書きと通し番号が付与されていることが多いが、一部には記載論文中で通し番号の言及がない本人以外の採取の標本のタイプ指定もある。たとえばT. nakaii H. KOIDZUMI (ボウソウタンポポ) はタイプ指定された標本は岡田氏採取のもので、小泉の通し番号は明示されていない。一方でこの記載にはパラタイプの指定もあり、パラタイプ標本には小泉の通し番号が明示されている。そして、シンタイプ標本含めすべてが科博のデータベースで閲覧でき、岡田氏採取のシンタイプ標本にも小泉の通し番号が振られていることが分かる。T. nambuense H. KOIDZUMI (ナンブシロタンポポ) は1点のシンタイプ標本と1点のパラタイプ標本が記載論文中で指定されており、両方とも本人以外の採取品で通し番号が無いものの、科博のデータベースではシンタイプ標本のみ閲覧することができる。これにも通し番号が振られている。パラタイプ標本は検索に掛らず、科博に無いか、紛失しているものと思われる。これら例から、おそらく本種のタイプ標本にも通し番号は振られており、通例通り科博に寄贈されたものと思われるが、寄贈時点で紛失していた可能性がある。
1)
●Planta parviuscula usque circ. 20cm. alta; Species T. hondoense NAKAI affinis, sed planta minor;
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■全株は同属他種に比してやや小型で約20 cm以下。T. hondoense に似ている。しかし全株は小さい。
2)
●flores flavi.
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■花は黄色。
3)
●/(根)
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■/
4)
●folia suberecta-erecta, apice apiculata;
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■葉は全体として亜直生ー直生、鋭頭
5)
●/(裂片)
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6)
●scapi circ. 3, post anthesin quam foliis breviores;
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■花茎は約3本で、開花後でも葉より短い。
7)
●/(頭花)
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■/
8)
●involucri foliola fere parvi-corniculata;
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■総苞片はたいてい小さい角状突起を有する。
9)
●squmae series exterioris late ovatae, margine distincte subhyalino-marginatae et fimbriatae, apice haud intus curvatae;
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■総苞外列片は広卵形、縁には明瞭な半透明の縁どりと長縁毛がある。先端は決して内側に曲がらない。
10)
●/(総苞内列片)
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11)
●/(花冠毛)
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12)
●achenia pallide straminea, subprofunde 2-sulcata distinguendum.
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■果実は淡い藁色で、明瞭なやや深い2溝がある。
13)
●/(果頭)
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14)
●/(果体)
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15)
●/(果脚)
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16)
●/(花冠托)
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17)
●/(冠毛)
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新釈 コウヤタンポポ
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